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叔母のドリスが、二階にあるネクターの部屋へ来ることは滅多にない。
腰を痛めてからというもの、階段の上り下りは億劫になっていたし、何よりの理由は、ネクターの部屋が〝足の踏み場もないほど散らかっている〟からだった。 聡明で真面目。一見、非の打ち所がないようなネクターだが、致命的な欠陥がひとつある。 ──片付けが極端に苦手だった。 部屋のあちらこちらには、冒険で拾ってきたガラクタや骨董品、修理待ちの品々、そして脱ぎ捨てられた衣類などが所狭しと積み上がり、ベッドやソファ以外にまともな空間はほとんど残されていない。 何度となく叔母から「片付けなさい」と注意されてきたが、それだけはどうにも直らなかった。ネクター本人に言わせれば、もはやそれは〝習性〟だろう。
整頓されすぎた状態では、かえって物のありかが分からなくなってしまい、使い勝手が悪い。 呆れたドリスは、いつしか何も言わなくなっていた。 だが、そんな散らかった部屋でも唯一整理の行き届いた綺麗な場所がある。 部屋の窓辺にある作業机だ。 そこだけは、ネクターの手で常に整理が行き届いていた。仕事道具である工具やパーツ類は、木箱や引き出しに丁寧にしまわれ、いつでも作業に取りかかれるよう整然と整っている。 その机の前に腰掛けて、ネクターは今、黙々と修理品と向き合っていた。──地底探索から早くも二日が経過した。
今ではすっかりと女職人としての日常に戻りつつある。 休暇中に溜まった依頼品は、時計修理が二点。それから、ラジオにミシン。 古代兵器と思しき彼は、ネクターの背後にぴったりと寄り添うように座って作業風景を眺めている。彼は、目覚めた時に見せた禍々しさからは想像できないほど、穏やかで物分かりの良い性格をしていた。
やんちゃそうな悪人顔ではあるが、その言動はいたって常識的で、素直だった。 「見つかるとまずいから、静かにしてて」――その一言にも、すんなりと頷いてくれた。 今はとにかく大人しくしてくれているだけでありがたい。しかし、いつまでもこの工房に匿っておくわけにはいかないだろう。
いずれは、叔母にもバレる。 けれど、いったい誰にこの状況を相談すればいいのか、ネクターには見当がつかなかった。 考古学者に頼るか、思いきって軍に届け出るか……。 けれど、立ち入り禁止区域へ勝手に足を踏み入れ、発掘品を持ち帰ったという事実がある以上、〝知らなかった〟では済まされないかもしれない。──そもそも、彼は何者なのだろう。
昨日、仕事の合間に王都の図書館を訪れ、軍史関連の書物を借りてきた。
けれど、人型殺傷兵器・アビスなんて、どの資料にも記載されていない。 そもそも、五百年も昔のイフェメラは、それこそ魔女狩りだの異端審問を行っていた古典的時代だった。 産業や軍事開発が著しい発展を遂げた時代と言えば、今より三百年から二百年程昔。 そう。五百年も昔に、ここまで精巧な機械人形が作れる筈もないだろうし、人の身体に改造を施すような技術も無いだろう 仮にできたとしても、非現実的な神秘の力としか考えられなかった。 彼にも、祖父の手帳を見せながら尋ねてみたが〝五百年の孤独〟にピンと来るものはないそうだ。 その上、記憶が大きく欠損しており、真実はまさに闇の中。お手上げ状態だった。 だが、決して手がかり皆無という訳ではない。 重要な鍵となりそうな事象といえば、初めに彼の発した言語──ツァール語によく似た言語だった。 推測するに、彼は〝元が人〟であって、ツァール周辺の出身者であると想像できた。重力操作という不思議な力を扱い、あんなにも恐ろしい姿に成り果てる等、人かどうかも怪しいとは思えるが、やはり、どう考えても人としか思えない。 ──何せ、自立し歩行し思考するのだ。(……それにしても、軽いのよね)
彼を引き摺って持ち帰った時、ネクターはその重さに違和感を覚えていた。
もし中身が機械でぎっしり詰まった機械人形であれば、到底あの時の自分の力で動かせた筈がない。 (推定、百二十ポンド……。五十四キログラムもないかもしれないわ) ネクターはひとつ息をついた後、装着していたルーペを外した。 足元に置かれた鞄から取り出したのは一冊の本──ツァールの史書だ。これも昨日図書館から借りたものだが、こちらはまだしっかりと目に通していない。 何か彼に対する手がかりでもあるか……と、そんな風に思って表紙を捲ろうとした時だった。 「その建物……」 背後にひっついていた彼が途端に言葉を発して、ネクターは振り返る。彼は食い入るように、本の表紙の絵を見つめていた。 「分かるの? ツァールの首都にある、ファルカ大聖堂よ」 訊くと、彼は頤に手を当てて目を細めて考えるが、すぐに首を横に振る。 「見覚えがある。だけど、何も思い出せねぇ……」 だが、それだけで充分だった。 彼はツァールの人間と確信に変わったのだ。 「貴方が最初に喋った言葉がツァール語に似ていたの。だから、何か分かるかもって……この本を借りてきたの」 「ツァール? そんな国の名前は知らねぇし聞いたことは無ねぇ。だけど……」 尚も彼は、史書の表紙に描かれたファルカ大聖堂の絵を睨むように見つめて唸った。 「ねぇ。今更にもなるけど、貴方はアビス以外に自分の名前は覚えていないの?」 「うーん。全然」 それだけ言うと、彼はふて腐れるように唇を尖らせた。 しかし、名前にも手がかりらしくものがひとつだけある。 ネクターは、彼の胸元に指し示した。 「そういえば、貴方の着けている砂時計のペンダントの底に〝REX〟って刻印が読めたの……レックスが貴方の名前じゃなくて?」 訊くと、彼は胸元から砂時計のペンダントを取り出して底面を覗き込むが、すぐに首を横に振る。 「ううん。……これはボクの名前じゃない気がする。そうだけど、そうじゃないと思うんだが」 そうだけど、そうじゃない。 その曖昧な返答に、ネクターは深いため息をつくしかなかった。あとほんのひとつ、何か思い出してくれれば――きっと、謎は一気に解ける筈なのに。
そしてその時、不意に、彼がぽつりと呟く。「……というか、こっちも今更だけどさ。おまえは?」
「え?」問いかけの意味が分からず、ネクターは目をしばたたいた。
ネクターは、レックスの言葉に硬直した。 だが、驚きで固まったのは彼女だけではない。職人の街を行き交う人々も、皆一様に足を止めている。向かいの労働者宿舎の前で花に水をやっていたおかみさんなんて、如雨露を手から落とし、口元を押さえて目を丸くしていたほどだ。 沈黙を破ったのは、冷やかし半分の口笛である。続いて「いやはや」「若い子はまったく!」などと下卑た笑い混じりの囁きが、どよめきのように広がっていった。 ──アッシュダストの人間は横繋がりが深い。即ち、皆がほぼ知り合い同士だ。こういう噂話はあっという間に広がる。 きっと、夕刻になる頃には、きっと街中に「ネクターが若い男に抱き寄せられていた」などという尾ひれ付きの話が飛び交っているだろう。 想像するだけで頭が痛くなる。これはもう冷やかしどころではなく、本当にとんでもない事態だ。 ネクターは憤激を通り越して青ざめ、レックスを睨みつけた。けれど、当の本人はそんな視線を気にも留めず、ぐいとネクターを抱き寄せたまま、真っ正面からスコットを睨み据えていた。「……そういう訳だ。おまえには渡さないからな」 レックスにしては低く、はっきりとした声音だった。 言われたスコットはヘルメットを手に、肩を竦める。「そう。レックスの気持ちはよく分かったけどな……渡さないも何も、それって一方的だろ? 独占欲むき出しってのも、男としてどうかと思うぜ?」 呆れたような声音だったが、その顔は不思議と楽しげで、挑発の匂いすらあった。 スコットは、搬送用バイクのハンドルにぶら下げていたヘルメットを被り直し、さらに言葉を続ける。「だけど、まぁ……正々堂々と真っ直ぐ言える奴は嫌いじゃない。むしろ好感持てるな。……レックス、俺はおまえと友達になれそうだって思ったわ」 つい先程までの剣幕はどこへやら。 彼はニッと爽やかな笑みを浮かべ、スタンドを蹴ってバイクのエンジンをふかした。 一方で、レックスはと言えば、言われた意味
(いったい何だと言うのか……) 店の扉を閉めて、ネクターは正面に立つスコットを見据えた。昼下がりの街路は少し湿った風が吹いていて、遠くからは馬車の音が響く。けれど、この場に漂う沈黙のほうがずっと重たく感じられた。 スコットは言葉を切り出そうとしているらしく、唇をモゴモゴと動かしては閉じてしまう。 落ち着きなく視線を揺らす仕草に、じれったさを覚えたネクターは、つい我慢できず口を開いた。「……話って何?」 すると、スコットは唐突に彼女の両肩をガシリと掴んだ。 「え?」 突拍子のない行動に、思わず目を瞬かせる。 彼はひとつ深く息を吐き、ようやく腹を決めたように口を開いた。「……唐突にこんな事を聞くのは可笑しいかもしれないが、君とレックスは……恋人同士とか、婚約者とか、そんな関係なのか?」 真摯な声音だった。問いかけは重く、冗談の色は欠片も無い。 ネクターは思わず目を点にする。あまりにも意外すぎて、心臓が一拍遅れて跳ねるのを自覚した。 気温も相まって、妙に暑苦しい。ネクターは煙たげに目を細め、掴まれた肩を振りほどいた。 「そんなわけないじゃない。彼は……私の弟子で、助手みたいなものよ」 詳しい事情など言えるはずもなく、ぶっきらぼうに答えて視線を逸らす。だが、スコットの疑問はもっともだった。 修理工房ロウェル・ブルームは、叔母と姪だけで切り盛りしてきた小さな工房である。弟子など迎えたこともない。そんな場所に突然、若い男が住み込むようになれば、外から見れば不自然に映るのも当然だろう。「スコット……私は異端の女職人よ? 婚約者なんて愚か、恋人すらいるはずないじゃない?」 面倒くさそうに吐き出した直後、スコットの言葉が重ねられた。「そうか。じゃあ、俺が──ネクターのことをずっと好きだったと言ったら、どう思う?」
肥沃な大地に、鮮やかな向日葵の群生が風に揺れている。 七月中旬、南西部ホワグラス辺境の深い森林。その内部に穿たれた地底洞窟の前では、軍人たちが汗を流しながら調査に追われていた。 本来ならば人の気配など滅多にない静謐な場所である。だが今は、鉄を引き裂くような重機の音が岩を削り、森の青葉を震わせていた。「……そもそも、こんな辺境に軍事遺跡が眠っていたなんて誰が知ってただろうな」 若い兵士が上官の目を盗み、隣で作業に従事する同僚にぼやいた。「だな。国にとって触れられたくない何かが隠されてたんだろうさ」「五百年の孤独……『古代兵器アビス』とか言ったか」 小声で呟かれたその言葉に、仲間の兵士は思わず手を止め、汗を拭いながら眉をひそめる。「……どんな代物か想像もつかん。噂じゃ人の姿をしてるとか言うがな。所詮、機械仕掛けの人形みたいなもんだろう」「そうだな……にしても、気味が悪い」 ──崩落の通報は、近隣住民から警察へ。それが軍部に届き、こうして動員されるに至った。 気象予報士が当日の天候を調べ、地質学者がこの一帯の地盤を確認した。 崩落当日の天気は快晴。活火山など周辺にはなく、地震の記録もない。むしろこの辺りは岩盤が硬く、崩れる要素など見当たらなかった。 それにもかかわらず、突如としてこの地底洞窟は口を開いた。 ……偶然では説明できない。そう結び付けられたのが、古より隠蔽され続けてきた〝古代兵器の起動〟だった。 しかし、現場の下級兵士に詳しい情報は下りてこない。知っているのは、国民向けのラジオで流された程度の話と、断片的に聞かされた「アビス」という名だけだった。「何にせよ、崩落で犠牲者が出てないことを祈るしかないな。とはいえ……ひと月も経って何も見つからんのじゃ、もう打ち切りだろ」「同感だ。古代兵器なんて噂も、全部でたらめであってほしい」
「どう? 特等席のご褒美は」 声に促されて、ネクターも首を傾けて夜空を仰いだ。 夏の大三角が頭上に鮮やかに瞬いている。金銀の砂を撒き散らしたかのように、群星が視界いっぱいに広がっていた。 息を呑むほどの満天の星空――まるで、手を伸ばせば掬えそうなほど近い。 夜間に飛行すること自体は珍しくない。 だが、それはあくまでも移動の手段であって、立ち止まり、ただ空を見上げて心を寄せる時間など持ったことはなかった。 こうして空を走りながら、暢気に星を仰ぐ――それは思いがけず、胸の奥に沁み入るほど心地良いひとときだと改めてネクターは感じてしまった。 だが次の瞬間、不意に車体が大きく揺れた。 ガタン、と腹の底に響くほどの衝撃。風は無風のはずなのに。慌てて側車へ視線を投げれば、レックスが立ち上がっているではないか。「──何考えてるの! 危ないでしょ! 座って!」 必死に声を張り上げながら、ネクターは舵を戻そうとする。 しかし、飛行二輪は言うことを聞かず、ふわりと下降を始めてしまった。小高い山どころではない、高度は三千メートルはあるだろう。 冷や汗が背筋をつたう。「ちょっと! 座って! 墜落するわよ!」 悲鳴に等しい声が夜空に弾けたその時―― キンッと。空気を裂く甲高い音が劈き、ネクターは思わず瞼を閉じた。ところが、揺れはすっと収まり、下降も止まっている。残されたのは規則的なエンジンの唸りだけだった。 ……間違いない。 胸の奥で確信を得て、ネクターはレックスを振り返る。 そこにいたのは、あの時と同じ――悍ましき異形の姿。 しかし彼は、ただ夢中で空を仰ぎ見ていた。 そんな彼は、ブルリと全身を震わせると、グッと両手を空へと突き上げた。「やべぇえ! すんげぇええええ!」 それは新しい玩具を手にした少年のような、心底から無邪気な歓声だった。あまりの純真さに、ネクターは呆気に取られて口を開けてしまう。「手が、手が…&hel
──ナイトドレスを脱ぎ、長い桃色髪を二つ緩く結い上げ、いつもの作業用ドレスに着替えてから、最後に革のコルセットをきゅっと締める。 その動作を終えると、ネクターは指先で飛行二輪の鍵を付けたキーリングをくるくると回し、階段を軽やかに下って裏口へ向かった。 狭い通路に面した裏路地。そこには、すでに作業着姿のレックスが待っていた。壁に背を預け、いつものように所在なげに立っている。「それじゃあ、行きましょうか」 裏口すぐに駐輪してある飛行二輪に鍵を差し込みながら、ネクターは声をかけた。「星を見るって、飛行二輪で見に行くのか?」「そうよ。アッシュダストはスモッグに覆われてるから、快晴でも星を見られることなんて滅多にないの。だから特別に、夜間飛行に招待してあげる。どう?」 からかうように言えば、レックスは迷いもなく頷いた。その素直さに、ネクターは少しだけ頬を緩める。 そうして飛行二輪を押しながら、工業地帯の河川敷を目指した。 ──エンジンは小型蒸気機関、燃料は灯油。側車付きの大型車体ながら、総重量は八八二ポンド前後。 数字だけ見れば軽量な部類だが、ネクター自身の体重からすれば九倍近い重さである。それでも二輪。否、側車付きなので正確にはタイヤは三つある。要領さえ掴めば、手で押すことも難しくない。 けれど、それは道が平坦なうちだけの話。 土手へと繋がる緩やかな上り坂に差し掛かれば、全身を前に倒し、体重をかけなければ前に進まない。 ネクターは汗を滲ませながら、ぐっと力を込めた。だが、不意に車体が軽くなった気がして振り返ると──レックスが側車を押していた。「ありがと」「これくらい。ていうか、おまえ、いつもこんな馬鹿みたいに重いモンをいつも押してんのかよ……」「そうよ? でも日頃から倉庫で部品を運んだりもしてるし、力には自信があるの。それに飛行二輪を押すようになってから、前より鍛えられた気がするわ」 肩で息をしながら笑えば、レックスは「頼もしいな」と苦笑した。 その目が優しく穏やかすぎて、ネク
爽やかな初夏を通り過ぎ──七月。夏が本格的に幕を開けていた。 工業都市アッシュダストは、王国内でも随一の熱気に包まれる場所だ。昼間は蒸気自動車や二輪車が往来し、夜になっても工場の煙突から吐き出される煙と熱気が街を覆い尽くす。熱は逃げ場を失い、重苦しく淀んでその場に留まる。 ──つまり、とてつもなく寝苦しいのだ。 その夜も、深夜二時を回っていた。ようやく浅い眠りに落ちかけていたネクターは、隣の部屋で窓が開く微かな音に気づき、ぱちりと瞼を持ち上げる羽目になった。 隣はレックスの部屋だ。 こんな時間に何をしているのだろう。顔をしかめながらも、寝汗で貼り付く髪を払い、ネクターは身体を起こした。 以前は足の踏み場もなかった自室だったが、あれ以来、きちんと整理整頓を心がけていた。 反面教師を目の前に置いておくわけにはいかない──そんな心境からだ。今では部屋の床はすっかり片付けられ、窓まで障害物なく辿り着けるようになっていた。 窓を押し開けると、どんよりとした淀んだ夜気が入り込み、肌にまとわりつく。蒸し暑く、重く、息苦しい空気が漂っていた。 琥珀色の瞳を細めて、不快感を堪えながら隣の部屋へと視線をやると……案の定、レックスの姿があった。 彼は窓辺に身を乗り出し、靄のかかった紺碧の夜空をじっと見上げている。「もう。こんな夜中に何してるの? 起きちゃったじゃない」 ただでさえ眠れない夜だというのに、と小言を交えて声をかける。するとレックスはネクターの方へ顔を向け、小首を傾げた。「真っ白な鳩がな、窓の外からボクをじっと見てたんだ」 「……鳩?」 思わず素っ頓興な声が漏れた。 寝ぼけているのだろうか。鳩なら確かにこの街にもいるが、鳥だって夜は眠るものだ。こんな時間に飛び回るなど、あり得ない。迷惑きわまりない話である。 ジトリとした目で睨みながら言う。 「さすがに見間違いじゃないかしら? 明日も仕事なのを忘れてないでしょうね」 ──修理職人の朝は早い。眠たくて働けないなど、労働者として論外だ。そう釘を刺してみせたのに、レックスは上の空のように夜空を見つめ、気のない返事しか返さない。 普段は小動物のように無駄に元気で、何かとキビキビしているのに。そんな彼が妙に神妙にしているのが、かえって不思議に思える。ネクターは首を傾げながらも、窓を閉め